大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)1560号 判決

被告人 S少年

〔抄 録〕

一、論旨第三点について。

所論は、原判決が家庭裁判所の送致決定書を事実認定の証拠にしたのは違法であると主張する。そこで記録を調査すると、原判決はその証拠の標目の冒頭に「家庭裁判所の送致決定書」を掲げていることはまことに所論のとおりであるが、右の書面は原審第一回公判期日に、検察官から「本件が家庭裁判所から送致された事実を立証する証拠として」提出されたものであることは、原審第一回公判調書の記載によつて明白であるから、原裁判所もまた前同様の趣旨、即ち本件については少年法第四二条、第二〇条、第四五条第五号等の規定による手続が適式に履践され、本件起訴が適法である旨を明らかにするために挙示したものであつて、犯罪事実自体の認定証拠に引用したものでないことが認められるから、右送致決定書を犯罪事実認定の証拠にしたことを前提とする所論の採用できないのは論をまたないところである。

(二) 次に所論は、原裁判所が、被告人の司法警察員や検察事務官に対する供述調書の取り調をした後に、証人尋問をしたり、第三者の検察官や司法警察員に対する供述調書を取り調べているのは刑事訴訟法第三〇一条に違反するものであると主張する。しかしながら原審第一回公判調書によれば、同公判期日において、検察官はまず秋元忠、藤田ヒロ子、渡辺治義の各司法警察員ならびに検察官に対する各供述調書、医師白井功の死体検案書、同黒須周作の鑑定書司法警察員の検証調書の証拠調を請求した後、被告人の司法警察員や検察事務官に対する各供述調書を証拠に提出したところ、被告人や弁護人もこれを証拠にすることを同意したので原裁判所は順次これを証拠調したことが認められるから、原裁判所が被告人の自白調書の証拠調をしたのは犯罪事実に関する多くの補強証拠の証拠調をした後であることが明白である。而して刑事訴訟法第三〇一条の趣旨とするところは、被告人の自白を内容とした書面が証拠調の当初の段階において取り調べられると、裁判所に事件について偏見予断を抱かせる虞があるから、これを防止しようとするにあることは多く説明の要をみないところであるから、同条にいう「犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後」というのは、「すべての補強証拠が取り調べられた後」という意味ではなく、「自白を補強しうる証拠が取り調べられた後」という意味であると解するのを相当とする。(昭和二六年六月一日、最高裁判所第二小法廷判決判例集第五巻第七号第一二三二頁参照。)従つて、いやしくも自白を補強するに足る証拠が取り調べられた後であれば、あらゆる証拠調を完了していなくても被告人の自白調書について証拠調をしても毫も差支えないものであると同時に、自白調書を取り調べた後においても、必要があれば証人尋問その他の証拠調をすることはいささかも妨げないものであるといわざるをえないから、原裁判所が前叙のように補強証拠の取り調に引続き、被告人の自白調書の取り調をなしその後においてさらに証人尋問等の証拠調をしたとしても、これを目して違法であるということはできない。所論は独自の見解に立脚するものであつて採用の限りではない。

要するに、原裁判所の訴訟手続にはなんら法令に違反する点は存しないから、本論旨もまた理由がない。

註 本件破棄は量刑不当。

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